パナソニック エナジーのMVW(ミッション・ビジョン・ウィル)が誕生するまでを紐解いてみた<後編>
皆さん、こんにちは!パナソニック エナジー「inside story」編集部です。
この記事は、私たちのMVW(ミッション・ビジョン・ウィル)がどのようにして誕生したのかについて、社長の只信さんにインタビューした内容の後編です。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
MVWを腹落ちさせるために原生林のある森へ
―私たちのキービジュアルとして「森」が使われていますが、それにたどり着いた背景を教えてください。
「幸せの追求と持続可能な環境が矛盾なく調和した社会の実現。」をミッションとしたときに、言葉でいうのは簡単だけど、新会社の社長として自ら本当に腹落ちしているのか、という疑問がぬぐい切れませんでした。本当にこの言葉でいいのか、パナソニック エナジーは何をしたい会社なのかを何度も自分の中で繰り返し考え直しました。その時に浮かんできたキーワードが「原生林」でした。経営メンバーにそのことを伝えたら、「何を言ってるの?」という顔をされましたけど(笑)
原生林は、さまざまな種類の植物が共生し、厳しい環境にも耐え抜くたくましさや力強さがあります。木が枯れて倒れたとしても、それを養分にして日が当たった瞬間に新たに草木が芽吹いたり、日陰で100年間じっとしてる植物もいたり。一つひとつの植物や微生物などが自覚を持ち、生き延びて種を増やそうとする強欲なまでの「生」がみなぎっているものがありながら、外から見ると多様でとても美しい。そういう組織、会社っていいなと思いました。
―それで、実際に原生林のある森に行かれたんですね。
岡山県西粟倉村に原生林と人工林が共存する場があり、森の中を歩いたり、星しか見えない山の中で空を見上げたりしながら、木々や草花が生き延びる戦略が見えてきて、直感的にこの木は車載電池を担当している事業部、これはBtoCを担っている事業部というのがわかってくるんです。自然の摂理と事業の摂理は近しいものがあり、森の中で議論することで私たちの会社が進むべき意義に気づくことができました。森は「生」そのものだから、五感をフル活用するので、会議室よりも染み込んでくるものがあったんですよね。やっぱり、私たちのミッションは間違っていなかったと腹落ちしました。
その後、本部長クラスの皆さんに参加いただき、初めて会話する人たちも多かったのですが、みんなと森の中で過ごしたことで改めて経営層が一つになれた気がしました。夜、キャンプファイヤーの火を囲みながら会話すると心が今までと違うモードに入っていって、役職や担当事業もなくフラットな立場で建設的な意見交換がたくさんできました。会社の組織図では一体になっているように見えますが、みんなが心と感覚でつながれるのは、自然の中に身をゆだねている時ではないかと実感しました。この体験を経営層だけで終わらせるのはもったいないし、会社が成長し続けるための栄養になるはずだと思い、「森の会議」を2021年11月からスタートしました。今では累計686人の社員が参加しています。(2024年11月末時点)
原生林のある森の中での体験を通して、私たちのミッション・ビジョンを視覚化するために、守口本社のエントランスに「森」をつくりました。特にこだわったところは、死生観や輪廻を取り入れること、そこで生きている木だけではなく、枯れた木を入れてほしいとお願いしました。たとえ朽ちてしまったとしても次の時代につなぐ養分となっていくさまは、私が会社を去った後も後輩たちがしっかりと継承していくことを表現したかったからです。会社は続いてこそ意味があり、私の時代では絶対に達成できないミッションを掲げているのも、そういうことが背景にあります。手の届きそうなミッションでは、チャレンジする風土も生まれません。
社員一人ひとりが価値創造の源泉
―私たちは、社員の家族と一緒に楽しめるイベントも定期的に開催していますが、どのような背景があるのでしょうか?
私たちは、⼈々の幸せを常に追求し続けながら、未来の環境もしっかりと守り続けるという課題と大きな責任があります。2022年、持ち株会社制に移行するにあたり、正直不安に思っていた社員は多かったと思います。経営メンバーで一番気にかけていたことは、社員と社員のご家族の心のケアでした。新会社への理解と愛着を深めてもらうためにロゴをつくり、そのロゴが入ったクリアファイルやTシャツなどを作成して、会社が設立する2022年4月1日には全社員のご家族に宛てて手紙とロゴが入った乾電池を送りました。
また、ご家族と一緒に楽しいことをしたいという思いから、職場見学会をしたり、スポーツ観戦するファミリーイベントを企画しました。皆さん非常に楽しんでいただけたので、いまでは定番イベントになっています。さらに、私たちの工場は地域社会からの理解や応援があるからこそ生産活動ができますので、拠点ごとに地域イベントへの協賛や工場見学会などを企画しています。社員の皆さんがビジョンの実現に集中してもらうには、ご家族や地域社会などに安心・信頼してもらうことが何より大切だと考えています。
―私たちの職場は、さまざまなレイアウトとデザインですよね。働く環境を整えることを重視しているのは、なぜでしょうか?
私は「価値は人からしか生まれない」と考えているので、社員の皆さんが自由闊達に楽しく思い切りチャレンジできる風土づくりも、MVW実践には欠かせません。その一つの取り組みがオフィス改革です。出社するのが楽しみになるような職場に変えてもらうため、まるで自分の家をリフォームするかのように、ありたいオフィスや休憩スペースを描き、そこを利用する人たち自らでレイアウトのベースをつくってもらいました。皆さん楽しんで取り組んでもらえたようで見事に同じレイアウトはなく、オリジナリティあふれた職場環境になっています。
人生の中でかなりの時間を仕事に使い、会社で過ごしています。新しいアイデアが生まれる空間や、建設的な会話ができる環境は生産性にも大きく貢献すると思います。出社することが当たり前だった私の若い頃と違ってコロナ明け以降、今日これだけの人が偶然会社に集まっていることは奇跡だと思うようになりました。偶然居合わせた社員同士が新たな価値を創り出していくには、ぶれない軸(MVW)をベースに議論していくことが重要です。ミッションの実現に向けて一人ひとりが自発的に行動する組織は、予測困難なVUCA※時代にあってもスピーディに社会からの期待に応えられると信じています。
※Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)という4つの単語の頭文字を並べたもので、予測が難しく変化が激しい社会や経済情勢を表す言葉
おわりに
「パナソニック エナジー」が発足して3年弱が経ちましたが、いまも経営メンバーは隔週でMVWに関する議論を続け、ビジョンに対する想いを燃やし続けています。そして現在、「社会へのお役立ち」を加速していくための全員活動が、新たにスタートしています。
今後も、パナソニック エナジー、みんなの熱い想いから生まれた取り組みにご期待ください!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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